第四抄 後編

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茜はぎこちなく頷きながら、目を伏せて記憶をたどる。思考がまとまらない。 何を、誰を信じればいいのか? 狂は硬い表情のまま呟く。 「夢と現(ウツツ)の怖さに引っ張られて、ずいぶん覇気が無いな……。俺達がそばにいる事を忘れないでくれ」 夢……。 ――先ほどまで夢を見ていたのか。ひどく恐ろしい夢だった。狂が、沼御前に茜を差し出すと言っていた。 ショックのあまりに泣いていたところを、沼御前が来て、諦めて出ていこうとした……。 「なんだ夢か……」と弱弱しく笑おうとして、茜は表情を消す。 寝る前は一緒にいたはずの獣の妖(アヤカシ)、白い猫又の姿が無い。 気まぐれ気質で姿を潜めてるだけなのか?それとも、外に出かけたのか?彼女が見た夢では、猫又は茜を導くかのように外へ出かけた。彼女の服が濡れていたり、足が汚れてる事は無いが…… 「……ねえ、雨が降ってた?狂の服、少し濡れてるよ」 「ん?ああ。先ほど降ってきて、今は本降りだ。他の皆は明日の夜に向けて準備を始めているところだ。明日、お前にはお面を被ってもらう」 ああ。あの話は、夢ではなかったのか――。 茜は何もかも諦観した。 .
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