69人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
茜が助けた男子学生が言うには。
不慮な事故に巻き込まれる学生と一緒に行動していた時があったそうだ。
いつも通り、学校が終わった後は古い神社の境内地へ立ち入って、ゲームしたり、探検したり、特別な事はしていない。
メンバーは七人で、彼を含んで男三人と女四人。
その一人目が突然、気を失って病院へ運ばれる。
二人目は、学校の階段を下っている所を転倒して全身打撲という大怪我。
三人目は、駅のホームから転落して電車に轢かれる寸前だったと。
たまたま偶然、短期間に友人の不幸が重なっただけって事は……無いんだろう、と思いつつ、男子学生は仲間と距離をとり始めたそうだ。
そして、彼にもとうとう災いが降りかかる。
――茜が目に見えた、影から伸びる黒い手。
身動きが出来ないようにがっちりと掴んでいたそれは、間違いなく殺意があった。
「あ、はは……思い知れぇ……」
ばちっ。
茜は祓った時に、空気が震えて霧散する濃い影に何かが引っ掛かった。
病んだ嗤いの気配。
「それが……妖でもなくて、怨霊でもなくて分からないままで。やっぱり何かの祟りだったりするのかなぁ」
「うーん、その話だけじゃ祟りって決めつけるのはまだ早い気がするわ。それ以外に情報は無いのかしら?」
「はい……手がかりはこれだけです」
「あらまぁ困ったわね。狂ちゃんはこの時にどうするのかしら」
康子はうーんうーんと首をひねる。
茜によると短期間で共通のある人達を狙った者が、いるかもしれない。
分かる事は……茜が通っている学校の学生達、古い神社。
「そうねえ。茜ちゃん、明日から怪しい人がいないか観察してくれるかしら?私は神社の方に行ってみるわね」
「えっ!康子姉さんは無理しないで下さい!もしも何かが襲って来て、怪我をしたりしたら……狂達が黙っていないと思います……」
康子は、狂のたった唯一の家族であり、斑尾やレン達からはお嬢様扱いを受けている。彼女に何かあったら、彼等が何をしでかすか分からない。
「やだー、本音はそっち?大丈夫よ、心配しないでちょうだい。茜ちゃんと狂ちゃんみたいな力は無いけど、私にも狗御家の血が流れてるわよ、少なくともね」
茜の言葉に、康子は長い髪を揺らして、くつくつと笑った。
「不謹慎だけど、久しぶりに探偵ごっこみたいで楽しみになってきちゃった」
面白がってるような微笑みを見た茜には、ふと重なるものが見えた。
長い睫毛に縁取られた切れ長の目。
艶やかさを匂わせながら、冷徹で誇り高い狗御家の若主人に少し似てる。
(この事件、早く解決するといいな……)
ちょっとひきつり笑いした茜であった。
.
最初のコメントを投稿しよう!