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「授業始まっちゃうよ?」
「あっうん、ちょっと独り言出ちゃった」
「うわー茜って本当に変な人だよね」
ふわっとした笑い声に包まれて、茜はちらっと狂に目をやった。
彼は視線を流して、こちらを見ている。
そして、何もなかったように背中を返して立ち去った。
(……俺は全く関係ないっていう顔をしてた。いいわねえ、立ってるだけで周りからちやほやされて)
少しもやっとした茜に、クラスメートの一人が声をひそめた。
「さっきのさぁ、中庭に居たの小夜子(サヨコ)さんだったよね。嫌なもの見ちゃった。茜もあの子に関わらない方がいいよ」
別の二人も、その名前を聞いてわずかに眉をひそめる。
何の事だか分からない茜が尋ねると、彼女達は視線を交わし合った。
さらに声を低める。
「噂のある人よ」という口ぶりだけど、ひどく陰湿なものがちらついてる。
「他の人に言わないでほしいんだけど。あの人、暗いから一時的にグループにからまれてさ……一回、自殺未遂したらしいよ。その続きがあって」
「最近さ、怪我人が出てるって知ってる?その怪我人が全員、その子にからんでたメンバーなんだよねー―」
「うわ、それってやばいじゃん」
茜はこないだ助けた少年を思い出した。
彼は「メンバーと一緒に行動していた」としか言っていない。もし、その噂が本当であれば洒落にならない。
(だけど……さっきの人、変な感じは無かったな。もうちょっと情報を集める必要がありそうね)
その時、始業のチャイムが鳴った。
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