19-2.再会(2)

1/1
前へ
/89ページ
次へ

19-2.再会(2)

「レティシア様!」  その時、私の耳に聞き慣れた、懐かしい声が飛び込んできた。  私は階下に視線を移す。そこには、第一騎士団に守られるようにして私を見上げる姿が。  私はたまらず、階段を駆け下りた。  貴族の令嬢らしくなんて、一切構っていられない。誰に何と言われてもいい。私は一目散に彼女の元へ駆けて行き、その身体に飛びついた。 「セシル!」  私よりも小柄セシルは、思い切り抱きついてきた私を受け止めきれず、倒れそうになる。でも、そこをすかさず一人の騎士が支えた。 「レティシア様! はしたないですよ。もう子どもではないのですから、落ち着いてください」 「だって、セシル……っ!」 「レティシア様が思い切り来るものだから、私はひっくり返りそうになりましたよ。そうなったら、二人して倒れるところでした。アリソン様、申し訳ございません」  ハッとして顔を上げると、セシルの隣にはアリソンがいた。セシルを支えてくれたのは、アリソンだったのだ。  私は抱きしめていたセシルから離れ、今度はアリソンの手をしっかりと握りしめる。 「ありがとう、アリソン。アリソンがずっとセシルの側にいてくれたって聞いたわ。セシルを守ってくれて、本当にありがとう」 「とんでもございません。レティシア様の大切な方をお守りすることができて、私も光栄至極に存じます」  アリソンは艶やかな笑みを浮かべ、優雅に一礼する。  女性でありながら腕の立つ騎士、その品格と美しさに思わず見惚れてしまった。 「レティシア様、ご心配をおかけし、大変申し訳ございませんでした。セシル殿を無事にお連れいたしました」  声の主は、第一騎士団団長のカミーユだ。彼は敬礼しており、その他の騎士もそれに倣っている。  ここにいるのは一部の騎士だけ。外にはもっと多くの騎士たちがいるはずだ。彼ら全員で、セシルを無事にここへ送り届けてくれた。  私は感謝の気持ちでいっぱいになりながら、騎士団に向かって深く頭を下げた。 「カミーユ、ご苦労様でした。第一騎士団全員でセシルを守ってくれたこと、本当に感謝します」 「勿体ないお言葉でございます」  カミーユが凛とした声でそう告げると、騎士団は再度敬礼する。  私がそれに胸を熱くしていると、いつの間にかすぐ側に来ていたエルが彼らに労いの言葉をかけた。騎士団は最敬礼でそれに応える。  そしてエルは、私とセシルに微笑みかけ、数日はゆっくりするようにと言った。 「ここまで来ればひとまずは安心だ。セシルは長旅の疲れもあるだろうし、レティシアと積もる話もあるだろう。まずはゆっくりと身体を休めてほしい。レティシアも存分に甘えるといい」 「エルキュール様、ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えさせていただきたく存じます」 「ありがとう、エル」  エルは私たちに笑顔を向け、カミーユやアリソンたちを引き連れ、邸を出て行く。  エルだって昨夜からずっと眠っていないだろうに。それでも、これから第一騎士団から詳細な報告を聞き、改めていろいろな対策を講じる必要がある。  私も助けになりたいけれど、まずは心を落ち着かせ、冷静にならなければ。そのためには── 「セシル、あなたが無事で本当によかった」 「レティシア様とまたこうしてお会いすることができ、セシルは幸せでございます」  今度はそっと、二人して抱きあったのだった。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1650人が本棚に入れています
本棚に追加