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飾り寿し
「待たせちゃったね」
久仁彦さんはそう言ってマイメロのシートに上がり込む。私はワンピースの裾を整えてから冷たい麦茶を差し出す。
結婚したらおうちのお庭でこういった時間を過ごしたいわ。愛情がたっぷり詰まったお弁当で、お庭の芝生で。たまには、この公園に来てもいいかもね。
今日こそ結婚の話を進めてみよう。久仁彦さんはわりと奥手なんだと思う。結婚に関しては私の方がうんと知識人なんだから教えてあげなくちゃ。二人が安心して結婚へと進められるよう、私の想いと知識を伝えなきゃね。
私の中が結婚でいっぱいだぁ。
さて、今日のお弁当は飾り寿し。クマさん、コアラさん、カエルさんにペンギンさん。とっておきはトトロ!
アンパンマンも作ったんだけど、並べてみたらなんだか怖かったので、置いてきた。
こんな飾り寿し見たことがないと、久仁彦さんは大きくはしゃいでくれた。頑張った甲斐があったってものよ。どの顔からパクリといきますか♪
芝生を駆ける子供達が足を止めこちらを気にしている。私の作った作品に感動してくれている。こんなこともあろうかと、多めに支度してきて良かった。子供達に分けてあげたら、きっと久仁彦さんも喜んでくれる。こんな気の利くレディをお嫁さんにできるなんてって喜んでくれるわ。
そして近い未来に生まれ来る私達の子供について話が盛り上がる気配。一気に話を詰めていくのもありかしら。
久仁彦さんはどんな予想図を描いているのかな。やっぱり子供は、この子達よりも遥かに可愛いって考えてるかしら。
私が手際よく子供達に分け与えようと準備し始めると、久仁彦さんが私に言った。
「今の子達はアレルギー体質が多いから、やたらとあげたらダメなんだ。知らないのか?
試食だって親の同意がなけりゃ、あげちゃいけない時代なんだぞ」
冷静な口調で私に注意をする久仁彦さん。アレルギーだなんて考えてもいなかった。健康そのものに見える子達は何を食べても問題なさそうなのに。
飾り寿しをもらおうと寄ってきた子供達には私から事情を話し、散ってもらった。
まさかこんな展開になるだなんて。
私は、予期せぬ出来事に少し動揺してしまった。
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