じょうだん

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じょうだん

 結婚に関して博識な私でも、一般常識的なものがかけていることは知っていた。  だから、嬉しくなった。  さりげない優しさで私をフォローしてくれ、子供に対しての注意点を熟知している。さすがは未来の旦那さまだと、すごく嬉しくなった。  この人となら素敵な家庭が築けるって心から思えた。私はこの想いのまま久仁彦さんに将来のことを話し出そうとした。  すると、久仁彦さんから意外な言葉が飛び出してきた。 「俺、あんまり子供好きじゃないんだよな」 ──くにひこさんは じょうだんを いっている  突然何を言い出すのかと思ったら冗談だった。それに、二人の子供のことを言っているわけではない。きっと、今の子達が気に入らなかったのだ。そうか。私の手料理をとられまいと追い払う策にでたんだわ。将来設計に傷がついたわけではないので、私は安心した。  結婚に関して奥手な久仁彦さんには、どこから切り出そう。配送業の収入についてかな。私は計算があまり得意じゃないから分からないけど、年収は1000万円くらいならいいのかな。パパの収入には追いつけなくても、そのぐらいだったらどうにかやっていけるはず。  交通の便と治安のいい土地に住みたいことを私はにおわせてみる。久仁彦さんはトトロを見つめて私に言う。 「俺はこの土地から離れて田舎住まいがしたい。仕事も辞めて畑仕事に明け暮れたいな」  どうしたことでしょう。  私のパパやママが近くにいると遠慮しちゃうってことかしら。たくさんの援助だってあるのに、自分で野菜を育てたいだなんて。やっぱり久仁彦さんは男らしい人なのね。  野菜ならバルコニーの鉢植えで採れるわ。サークル時代にミニトマトを育てた実績があるもの。オクラだって採れるわ。虫や鳥さえなんとかなれば、いくらだって育てられるのに。知らないようなら、これも教えてあげなくっちゃ。  久仁彦さんの言う「この土地から離れたい」は、隣の区ってことかな。隣区は緑の多いところだって聞いてるから、きっとそこのことを言っているのね。  私は久仁彦さんの想いを察知して、それに沿った話題で結婚への近道を探ってみることにした。仲良しのお友達はもう三人もお嫁さんになっている。それこそ同じ市内だけど、それぞれ違う区に結婚によって引っ越している。そうなると、私も同じなわけで、みんながそうしているんだから、間違ってはいないのよね。
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