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現実は妄想
「思いっきり遠い県外がいいな」
久仁彦さんがいじわるをしてくる。
県外とは区外ってことよね。
まさか市外って意味じゃないわよね!
私が結婚の話題を詰めだすと、必ずセンスのいい面白い話に変えてくるから久仁彦さんってすごい人。いつだって私を飽きさせないでいる。たまに頭に膜が張った感じにさせられちゃうけど、それもセンスの良さがなせる技だからね。やっぱり素敵。
私も飽きられないようにしなくっちゃ。
なんだかいつも話が進まないけど、久仁彦さんの想いはいつだって伝わってくる。今日の飾り寿しだって、美味しそうにたいらげてくれた。私の手料理が好きだって表現してくれている。
久仁彦さんの求める理想は、現実と少しズレてるのかもしれないから、そこも私が教えてあげないと。遠回しな言い方も、時にはマイナス要因になってしまうから、いつか注意しないといけないよね。
私の描くものは理想なんてものではなくて、現実に沿ったものだから、やっぱり博識の私が主導とって引っ張らなきゃ。
あーあ。私は今日にでも入籍したいのに、ダメみたい。これから遠いエリアまで配達って言うから仕方がないよね。二人のおうちを建てるために、頑張ってくれてるんだから応援しなきゃ。
帰りはすごく遅くなるから連絡できないって、その言葉が私を優しく包んでくれている。
いつだって優しい久仁彦さんを癒せるように、もっと愛読書を増やしてみるね。
ゼクシィに『女の側からのプロポーズも成功のカギ』って特集組みのコマが何回かあった。アンケート結果は『男の人をたてるなら待つべし』がだんとつトップ。
ここは焦らず落ち着いて、久仁彦さんからのプロポーズを待ってみるとしよう。
【幸せが動き出したらゼクシィ】。
合言葉のようにつぶやいていたキャッチフレーズ。多分ずっと動いてる。出会った時に動き出してたんだもの。
奥手の久仁彦さんからプロポーズの言葉を引き出すため、アシストを抜からないようにしなくちゃ。
今日これから婚姻届をもらいに行こう。予備で五枚くらいあれば大丈夫かな。
よし、明日は心につき刺さるお弁当を作らなきゃ♪
「今日から私は、胃袋キャッチャー」
おわり☆
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