家鳴

1/1
前へ
/1ページ
次へ
暑くなってくると、涼を求めて怖い話を読みたくなります。 私が一番怖い話にハマっていた時期は洒落怖にどっぷり浸かっていましたが、今はYouTubeの動画も豊富で、動画で涼しくなることも多いです。あとは禍話なんてものもあるのですね。最近知ったのですが、リライトはどれも面白くて好きです。本家を拝聴した事がないので、今度聞いてみようと思います。 そんな怖活をしていて、怖い間取りの話を読みました。そこで、「あー、これって、そういう事だったのかな」なんて思った事があったので、日記にします。ただの日記で、怖い話ってわけじゃないです。 私は今の年齢にしては引っ越しが多く、新居に入っても「また引っ越すことになるだろうからなぁ」と思って荷ほどきもしないくらいです。引っ越す時は、今度こそ長く住むぞ!と毎回思うのですが、何かと事が起きて、引っ越しせざる得なくなります。2年更新の家に、満期で住んだ事がありません。今回もそんなお話。 数年前、とある事情で地方へ引っ越しをしました。その地区は過去に大規模な水害が起きた地域で、物件のそこそこ近場にも小川もあるのですが、入居を検討していた家は地形の関係からか、水害には遭いづらい場所にありました。実際、過去の水害では被害なしでした。ですが、築年数がかなり古いわりに、内装は綺麗にリフォームがされていて、不思議に思ったので素直に仲介屋に聞いたところ、諸々人災によって一度水に浸かっている、でも建物には影響がないから大丈夫、という説明でした。(今もある物件なので、ちょっとボカした表現にしています) その説明を内見の時に聞きながら率直に思った事が、「本当に?」です。その家、とにかく、水くさい。下水のにおいとか、近くの川のにおいとかじゃなくて、とにかく水くさくてたまりませんでした。それも、家全体がくさいとかじゃなく、その家のある部屋だけ、ものすごく臭い。その部屋以外はまったく問題なく、むしろ綺麗で住みやすそうな間取りだったけれど、こういう気持ちを無視して良いことはない、と経験上知っていたので、私はそこに住むのは嫌だなぁと思いました。本当に、今でもこの部屋だけ水に浸かっているのでは?と思うくらい、くさい。 ですが、残念なことに家族はこの家をとても気に入ってしまい、そのまま入居となりました。しかも私にあてがわれたのは、あの水くさい部屋。ちょっと嫌だな、とやんわり伝えたものの、ここも様々な兼ね合いで、結局その部屋が私の居場所と決まってしまいました。(兼ね合いっていうのは、例えばですが、介護が必要な家族のために出入りのしやすい部屋を使ったりしたあとの、余りをもらった感じです。どうやっても、そうならざる得ない感じになってしまうんです) 仕方ないので、まめに換気をしたり、除湿剤をたくさん置いたり、家具の配置も風通しが悪くないようにしたり…快適に暮らそうと色々やってみましたが、不思議とずっとジメジメ・水くさいまま。晴天・ましてや梅雨時でもないのに、窓を開けてても全っ然気持ちよくないんです。これはダメだなぁ、と思いました。そして部屋にあるものが、どんどんカビていく。除湿剤はそんなに消費されていないのに、置いてあるものが、どんどん悪くなっていくんですよね…。こういう時は植物を置いてみたりするのですが、そちらもどんどん枯れていきます。日当たりとか、悪くないはずなのに。 入居して三か月くらい経って、私も家族も落ち着いてきた頃でしょうか。今思えば、の話になるのですが、とにかく喧嘩が絶えなくなりました。ちょっとした事、例えばですけど、靴下を裏返して脱ぎ捨てないでよ!みたいな。そんな小さい事から、金銭面のこと、とにかく毎日色んな事で争いが絶えなくなりました。あまりお酒を飲まなかった人が、急に酒を煽って暴れたりとか、そういう「えっ」と思うような事も多々起きました。人が奇声を上げて走り出す、なんて「発狂」状態、初めてみたのもこの時期です。頭のどこかで「いやいや、なんかおかしくない?」って思いながらも、私自身もイライラが収まらない。怒りがコントロールできない。なんだかまずいな、と思いながら、毎日過ごしていました。家に帰りたくない、と思って、残業を増やしたり、無駄に公園に居たりしたのも、この時期に初めて経験しました。 人間、このままじゃいけないって思っていても、抜け出すのってすごく難しいんですよね。それも、変えたい動機が目に見える問題ではなく、「なんか嫌」って理由だと、ますます動けなくなる。周りを説得できなくなる。怖い話なんかでよく、「えっもうその状況なら引っ越しなよ?!」なんて思うパターンもありますが、きっとこれも同じ感じなんでしょう。大事件が起きるか、引っ越す理由ができるまで、家ってなかなか出られないものなんですね。 そうやってモヤモヤして、あぁ、もう、ダメかも。って本当に追い詰められた頃でした。急に引っ越す理由ができ、無事にその家を離れる事ができました。引っ越す事を決めてから、実際にその家を出るまで、一週間かかりませんでした。怒涛の展開で、普通ならヘトヘトになってもおかしくないはずだったのに、旧居を出たあと、すごくホッとしたのを覚えています。 その次の家に入ってからは、驚いたことに、今まで毎日のようにしていた家族間の喧嘩がピタッとなくなったんです。靴下裏返ってても、何も起こらない。お互い多少の失敗があっても、大変な事があっても、金銭の事で相談があっても、穏やかに話が進む。あれ?うちってこんな感じだったっけ?と不思議に思ったあの頃の事を、たまたま怖い話を読んでいて思い出した。それだけの話です。 家に限らず、場所ってとても不思議で。理由はないけど、なんか直観で「嫌だな」って感じたところは、本当にやめた方がいいですね。以前、また別の物件ですが、内見した時にクローゼットに近づいたらものすごい嫌な気持ちと吐き気がでてきて、「あの、このクローゼット、何か嫌です」なんて言ってしまったあと、「もしかしてわかる方ですか?ここ、その、そちら(クローゼット)で以前、入居者の方が亡くなっていて」と返されてオエーッてなった事があります。怖い話は好きですが、怖い体験は怖いです。(小並感) こんな感じで、もうちょっと踏み込んだ自分の怖かった思い出話なんかを残してみたいなぁ、なんて思ったのですが、家鳴りがどんどん大きくなってきているのでやめますね。また大丈夫そうな時に日記を書きます。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加