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「真樹?」 「……ごめんなさい」 「何がかな。」 甘えるのが心地いいなんて。 今までそんなこと、一度もなかったのに。 「大丈夫?」 声を掛けられて頷く。 大丈夫。ただ性別が変わっただけ。俺自身は何も変わってない。 「体調が優れないなら、さっきの部屋で休んで。」 「凪さん」 「どうかした?」 縋るように彼を見上げる。 俺、こんなんじゃなかった。 もっとしっかりしてて、今みたいになよなよしてない。 誰かに甘えたいとか感じたこともないし、もっと……もっと、アルファらしかった。 そんな想いを凪さんに伝える。 涙が頬を伝って、息を吸いすぎて苦しくなって、そんな俺を優しく包み込むように抱き締めた彼は、囁くようにして俺に言葉を掛けてくれた。 「大丈夫。真樹はしっかり者だ。甘えるのは悪いことじゃない。」 ストンとそれが胸に落ちて、ああ、俺は大丈夫なんだと漠然と感じた。 気が付けばそのまま随分時間が経っていて、凪さんの膝に向かい合って座り、香りを匂いながら静かに泣いていた。 「真樹、お腹空かない?」 「空いた……」 泣き止むと、それを待っていたのか凪さんが食事の準備を始めた。 テーブルの席に着いて待っていると、目の前に置かれたのはサーモンとほうれん草のクリームパスタ。クリームパスタは俺の大好物だ。嬉しくなって自然と口角が上がる。 「口に合えばいいんだけど」 「いただきます」 フォークにパスタを巻き付け、口に運ぶ。 優しい味が広がって嬉しい。 久しぶりにこんなに美味しいものを食べた気がする。普段から食事はちゃんと採っているのに、まるで何も食べていなかったかのようにガツガツと食べてしまった。 恥ずかしく思いながらも手を合わせる。 「ご馳走様でした。とても美味しかったです。」 「よかった」 何もしていないからせめて皿洗いはしようと、席を立つと「座ってて」と言われてしまう。 「でも、何もしてないので……」 「今日くらいは何もしなくていいから。」 また頭を撫でられる。 大人しく座り直して、凪さんが食器を運んで行くのを眺めた。
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