4020人が本棚に入れています
本棚に追加
少しすると彼は戻ってきて、ヨーグルトを渡される。
発情期前、俺の場合は食欲が落ちてしまうことももう既に知っているらしい。それだけは食べようね、と言われて頷いた。
「今日はどうする?体が辛いようなら無理しない方がいいと思うし、薬飲んでましになったなら遅れて行くのもいいし……。」
「……薬飲んだら準備します」
「一緒に行く?」
「……うん」
そっと背中を撫でられる。
ぐっと下唇を噛んで、また溢れそうな涙を堪えた。
ヨーグルトを食べ薬を飲んだ後、凪さんに促されるように支度を始め、家を出る頃には抑制剤が効き始めたようで気分はちょっとずつ上がってきていた。
会社に着くまでに朝の失態を思い出してヒヤヒヤし、着いた頃には顔を蒼くしそうな勢いで後悔し、固まっていた。
「あ、あの、凪さん、ごめんなさい。無視したり、ご飯持ってきてもらったりして……」
「……ああ、無視されたな、そういえば。」
今思い出したというように間を空けて返事をした凪さんは、俺の顔を見てプッと吹き出した。
「いいよ、気にしないで。発情期前で情緒が不安定になってたんだろ。辛いのは真樹だし、俺は何ともないから。」
最初のコメントを投稿しよう!