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ふぅ、と溜息を吐くと突然凪さんが俺の体を覆うように近付いてきて、『あ、キスされる』と思って目を閉じたのに待っていた感触は無く、目を開けると俺の後ろにあるシートベルトを掴みカチャと音を立てて付けられた。
「……は?」
思わずそんな声が漏れた。彼はエンジンをかけて車を発進させる。
「シートベルト付けないと帰れないよ。」
「……言葉で言えばいいのに」
「疲れてるみたいだからやってあげたくなって」
「ひどい」
「え、何かしちゃった?」
ジッ……と横顔を見ていると、彼の口角が上がっているのがわかる。確信犯だ。俺で遊んで楽しんでるんだ。
凪さんの言葉をまた無視してフンっと顔を背け、窓の外を眺めた。
家に着いてすぐ、部屋着に着替えた俺はソファーの上で膝を抱えて座った。
凪さんは早速夕食の準備に取り掛かっている。
お風呂は朝の内に洗って、帰宅した頃に湯船が張れるように設定していたようで、明るい音楽が流れた。
音楽が止むと、彼はソファーまでやって来て俺の名前を呼ぶ。
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