番外編22

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きっと発情期前のせいだ。 体がだる重い。それから嫌な事ばかり考えてしまう。 中学生のとき、初めての発情期に見舞われて、理性が働かずに当時唯一知り合いの中でアルファだった真樹を襲ったことを思い出す。 それからは大変だった。 オメガへの差別は今よりも酷い頃だったから、自業自得だけれども消えてしまいたいほどに辛かった。 ただ父さんがアルファで母さんがオメガであったことが救いで、両親からの愛情はたっぷりと受けることができた。 大変だったけれど、母さん達はいつも「大丈夫」と言って笑って、そうして僕を守ってくれていたのを思い出す。同時に、そんな優しい母さん達を悲しませたことも。 「……ぅ」 一人暮らしの部屋で膝を抱えて、そこに顔を埋める。 思い返すとあの日からほぼ毎日、母さん達は夜遅くまで話し合っていた。 僕の前では絶対にそんなところを見せようとしなかったけれど、母さんが泣いていたことは知っている。 せめて、ベータで産んであげられたら、と漏らしていたのを知っている。 「うぅ……」 思い出す度、消えてしまいたくなる。 寝転んで、クッションを抱きしめた。
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