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凪さんは優しいから、ちょっとやそっとの事じゃ怒らない。
例えば休みの日。家で仕事をしている彼とどうしても出掛けたくなって、忙しそうなところを話しかけお出掛けしたいと伝えると、少し困った顔をしてから結局『いいよ』と言ってくれる。
例えば夜。眠たそうな彼に『まだ寝ないで』と伝えると、俺の話が終わるまで起きていてくれる。
そんなに高い頻度でワガママを言う訳じゃないけれど、さすがの彼でもウザったいだろうに、怒ったりイライラすることも無い。
俺が満足するまで付き合ってくれる彼だけれど、今回ばかりは許せなかったらしい。
「真樹、朝帰りはさすがにいただけない。」
「……ごめんなさい」
金曜日の仕事終わり。蒼太と二人で飲みに行った。
お互い下戸なのに話が盛り上がって楽しくて、気が付けばカラオケで朝を迎えていた。
スマホには凪さんからの大量の不在着信とメッセージ。
蒼太も真っ青な顔をしていたので、きっと俺と同じ状況だったのだと思う。
慌てて家に帰ると、仁王立ちで玄関に居たのは凪さんで。
顔を洗い、お風呂に入ったあと、リビングの床に正座した俺をソファーに座らせ、お説教が始まった。
「真樹は社会人だし、お酒を飲んだり、朝まで遊んだりすることに対して俺は何も言わないよ。真樹が楽しいことは止めない。もっと遊んでおいでとも思う。でもそれは同居人に伝えていればの話。」
「……はい」
「心配するだろ。帰ってこないし連絡もつかない。探しに行こうにも検討がつかないし……。」
「ごめんなさい」
百パーセント自分が悪いので、彼に何かを言い返すなんてことは微塵も思わずに素直に謝罪を口にした。
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