番外編23

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「うん。真樹が反省しているのはわかってるからあんまり怒らないけど、次同じようなことがあったら、本気で怒っちゃうからね。」 淡々と冷静に叱られている今も、怒らせてしまったショックも相まって怖いのに、本気で怒るって……これ以上があるのか。 ああ、もしかして。 「……本気って……叩く……?」 「はあ!?」 「ヒッ!」 目を見開いて立ち上がった凪さんは、そのまま俺を見下ろして数秒固まったあと、力無くソファーに座り直した。 学生時代、勉強で成績があまり良くないと父親に叩かれた事がある。 母さんには呆れた顔をされた。 食事の時間は沈黙。食器が擦れる音が時々聞こえて、何の音もない。 暫くは家に帰るのが嫌だった。重たい空気にただ耐えるのは辛かった。 思い出してシュンとしていると、凪さんに優しく名前を呼ばれる。 「あのね……そんなことしないよ。叩いたって何の解決にもならないし。」 「……?」 「言葉で伝えたらわかるだろ。」 言葉で伝えるなんて、そんなことはなかった。 ただ痛みと重たい空気があって、二度とそれを味わいたくなかったから、怒られたあとは寝る間も惜しんで勉強に勤しんだことがある。 「……そういうものですか?」 「……真樹がどう育ってきたかはわからないけど、俺は怒った時に暴力に走る人は嫌だな。」 困った顔でそういった彼に、なるほど、確かにそうだと頷く。 俺は叩かれるのが嫌だったから。 「本気で怒るって言ったのは、しっかりお話するよってこと。」 「わかりました」 「……真樹には嫌な思い出があるんだね。」 「……叩かれるなんて普通でしたよ。」 苦笑しながらそう言うと、凪さんは俺を包むように抱きしめてくれた。
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