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あれから一週間後。
みずほ先輩と俺は広報誌の編集作業を終え帰路についていた。
「いやー、ことなきを得たどころが大金星でしたね」
「ほんとねー」
沈みゆく夕日は帰り道をオレンジに染め上げ、ふたりの影を遠くまで描いている。
「あのふたり、その後もめたりしてないですかね」
「わたしは大丈夫だと思うな」
みずほ先輩は確信のあるような顔で俺を一瞥する。
コンビニの前を通るとき、ふと新聞の見出しが目に入った。
『桜木淳と鈴音美沙、熱愛発覚! 事務所公認!』
「みずほ先輩、あれ……」
「かつき君、まさかあのふたり……」
「うわぁ、俺たちひよっとしてキューピッドだったんっすかね」
「世の中誰と誰がくっつくかわからないわよねー」
ふと、みずほ先輩が足を止める。
振り返ると逆光の中に柔らかくて上品な笑顔が浮かぶ。髪は風になびき、ゆるやかに揺れていた。
「あのとき、かっこよかった」
ささやくような声でそういった。
「そうっすね、さすが俳優さんっす」
「違うよ、きみのことだよ」
「おっ、俺っすか⁉」
一瞬びっくりしたが、正々堂々謝ったことだと思い直す。でも俺は下僕としてみずほ先輩をかばっただけ。かっこよくなんてない。
それから吐息のような声で尋ねてくる。
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