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「なっ、なによ! 『鼻につく』なんて、かつき君はわたしがうっとおしくて嫌だってこと⁉ それともさっそくわたしに飽きたってこと⁉ どっちの意味でもあんまりよ! わたし、かつき君のこと、もっと誠実なひとだと――」
みずほ先輩は意味を誤解したらしい。こういうときは言葉で説明しても感情が先行し拒絶されてしまう。となると無実の証明は行動あるのみだ。
俺はすかさず手を伸ばし、親指の腹でみずほ先輩の鼻先をぬぐった。
「――あっ!」
誤解に気づいたみずほ先輩はすぐさま閉口した。指についたクリームをぺろりと舐め真顔でいう。
「鼻先にクリームつけてむきになるみずほ先輩、めっちゃ可愛いですよ」
とたん、みずほ先輩の顔が真っ赤に燃え上がる。
「なっ、なっ、何言っちゃってんのよー! とっ、とっ、尊すぎて大罪よーっ!」
そう叫んだ瞬間――。
「ハイ、カットォォォ‼ そこ、盛り上がりすぎィィィ‼」
監督がメガホンを俺らに向けて声を張り上げた。
みずほ先輩は鼻クリームというハプニングについ、立場を忘れてしまったようだ。
「「すっ、すいませんっ! お許しを!」」
そうして俺たちふたりは卓上で平謝りすることとなった。
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