みずほ先輩と俺、広報誌取材で女優さんに怒られる

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★   「テイクツー、スタート!」 ふたたびカメラが回る。桜木さんは気にも留めていないようだったが、鈴音さんはひどく不機嫌な顔をしていて相当やばい。いくら一般市民とはいえこれ以上の粗相は許されない。 けれどカップルらしい演技をしなければ。 話題を探すべく辺りを見回すと、少し離れたところに着ぐるみの集団がいた。さまざまな植物や果物を模した姿をしている。 「みずほ先輩、ゆるキャラ集団がいますよ」 「ほんとね、なにかイベントでもやってるのかしら」 「最近増えましたよね、なし崩し的に」 みずほ先輩の表情が一瞬、固まった。 「――こほん。かつき君、ちょっと聞くけど『なし崩し』ってどういう意味かわかる?」 突然、理知的っぽい質問をしてきた。真面目なカップルを演じているのだろうか。 「当然知ってます」 「うやむやにするってことじゃないのよ」 「わかってますって」 「じゃあほんとうの意味はなーんだ」 真顔のみずほ先輩はパフェをほおばりながら顔を近づけた。 「なし崩し――それはふなっしーのポジションを崩しにかかること。ねばーる君が最有力!」 マジレスした瞬間、みずほ先輩は口に含んだクリームを勢いよく噴き出した。俺の顔面に直撃する。 「ぶへっ、みずほ先輩ひどっ!」 「あは、ごめ、かっ、かつき君……、それ面白すぎるよぉ~!」 みずほ先輩はお腹を抱えて大笑い。いったい何がツボにはまったのだろうか。 かたや俺はクリームまみれで笑えない状態だ。 そこでまたもや監督の雄たけびが響く。 「カットだコノヤロー!」 ――しまった! 「おめーら面白すぎるんだよぉ! NG集に組み込んでやるから覚悟しとけよぉぉぉ!」 監督は笑いながらこめかみに青筋を立てている。みずほ先輩はいまだに声を殺して悶絶していた。 「すっ、すみません!」
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