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みずほ先輩と俺、広報誌取材で女優さんに怒られる
ああ、なんてことだ。
俺、黒澤克樹は青春街道まっしぐらの高校生、のはずだった。
それがまさか、とある先輩の下僕として生きることになるとは。
諸悪の根源は新入生歓迎会で行なわれる「鳥籠」と呼ばれる儀式だった。
それぞれの部活の部員たちが体育館で待ち構え、その場に新入生が放たれる。そして繰り広げられる勧誘の嵐。
けれど参加するのは部活だけではない。才知あふれる学生が集う生徒会もまた、そのひとつだったのだ。
その俺を下僕として従えるのは――。
「――ねえ、かつき君ったら、隣のいたいけな女の子をほっといて何、妄想してるのよ」
「ひゃっ、ひゃいっ! みずほ先輩、今のはここにいたるまでの流れを端的に思い出して――」
「男なら未来と隣を見てなさい!」
清川瑞穂――みずほ先輩は二年生の副生徒会長で、広報誌の作成を担当している一輪の花である。
月二回の出版が義務なので猫の手を借りたいほど忙しい。だから俺はその手伝いをさせられる役回りとなった。
というわけで、今日はみずほ先輩とツーショットでショッピングモールを訪れている。
「しっかし、学校帰りにこんなところで遊んでていいんすかね」
遠慮がちに尋ねるとみずほ先輩は数歩、俺の前に出て振り返る。すこしだけ身を屈め上目遣いで俺を見つめた。
立てた人差し指をピンク色の唇の前でチッチッと左右にふる。
「遊びじゃないの、これは生徒会の大事な仕事なのよ」
「それ、大義名分っすよね。だって先輩なんだか楽しそうだし」
「わたしはいつでも真面目です!」
きゃしゃな首を傾けると艶のある黒髪がはらりと揺れる。日本人形のような整った丸顔に、ゆで卵のようなきめ細かい肌。遠慮がちな奥二重だけど、醸し出す眼光は俺を捉えて離さない。自覚はあるのだろうか、自然体の美貌はそれだけで――罪だ。
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