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『まほうしょうじょになると、おにいちゃんに好きになってもらえるの?』
玲紗は言いながら、俺の横に座り込んだ。じっと見つめられ、何だか照れた。
『や、魔法少女だから好きってわけじゃないよ。でも、魔法少女っていうのは大きな魅力だな。すごいんだぞ。空だって飛べるんだ』
やや興奮気味に言えば、玲紗はすくっと立ち上がった。
『きめた。わたし、まほうしょうじょになる!』
目指したからと言ってなれるものじゃないが、可愛らしい目標だと思った。兄として、妹の夢を潰したくはない。こんなに可愛い夢を応援することが悪いはずもない。
『そうか。じゃあ頑張って、すごい魔法少女になってみろ』
俺はにこやかに目を細めた。本心で、可愛いなあと思ったからだ。
『うん、やくそくする! わたし、今日からすごいまほうしょうじょになる! そして、おにいちゃんにもっと好きになってもらうの。わたし、がんばるから!』
妹がこんなことを言うのも今のうちだろうなと思った。小学校に上がり、好きな男子でもできれば掌返しで俺のことを避けるようになるだろう。実際に年の近い妹がいる友達は、「喧嘩をするどころか無視だよ無視」と嘆き、「喧嘩ができればまだいい方だ」と肩を落としていた。俺に好かれるために魔法少女を目指すなんて、本当に今だけのことだと分かっていた。長くても二年ともたず諦めるだろう淡い夢。近い未来には、アニメの魔法少女に惚れた俺を馬鹿にするに違いない──そう思っていた。
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