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かつて、かわいい妹の可愛い言葉を、俺は素直にカワイイと思っていた。
当時、玲紗は五歳だったはずだ。まだ幼稚園に通っていたから、おそらく記憶違いはないだろう。
その頃、俺は中学一年生だった。居間のテレビで、魔法少女モノのアニメを観ることが大好きな小僧だった。その作品に出てくるキャラクターに恋をしていた。金髪がよく映えるその子は、圧倒的な魔力で敵を倒し、とても魅力的で、理想的な女の子だった。
ある日、アニメに夢中になる俺を眺めていた玲紗が、不満げに言った。
『おにいちゃん、その子が好きなの?』
まともに返事するのも億劫だったので、俺は『ああ、そうだよ』とだけ返した。
すると玲紗は、
『どこが好きなの? どんなところが好きなの?』
と食い下がってきた。
そう言われても、上手く答えられない。顔はもちろん好みだし、声だって大好きだ。強いところも、意外と内気なところも好きだ。同級の男子に興味を持たず、女の子同士でつるんでいるところも好きだ。どこか一つが好きなわけじゃない。このキャラを構成する全ての要素が好きだった。
『そうだなあ、魔法少女ってところかなあ』
まあ、そんなとこだろう。リアルの女子でこんな感じの子はいない。架空の存在だからこそ、素直に好きだと思えるんだ。
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