魔法少女☆れいさ

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 だが翌日、玲紗は、娘を溺愛する甘い父親におねだりをした。 『まほうしょうじょのどうぐがほしいの』  父親は、喜んで玲紗をショッピングモールに連れて行き、俺には到底使わないであろう金額分の玩具を買い与えた。いわゆる「なりきりグッズ」だ。居間いっぱいにそれらを拡げ、説明書を読みながら遊びだす。効果音が出るもの、光が瞬くもの、ギミックが動くもの等、色々なバリエーションがあった。父親はデレデレになりながら、娘の喜ぶ顔を眺めていた。機嫌が良さそうだったので、俺はそれとなくゲームソフトを買ってほしいと言ってみた。返ってきたのは無言の圧力だけだった。まあ、慣れた対応だ。  玲紗は玩具を手に、俺のそばに近づいてきた。 『わたし、まほうしょうじょになれたかなあ?』  何だか不安そうな顔をしていたから、優しく笑んでおいた。 『道具を持っているだけじゃ魔法少女にはなれない。ちゃんとそれらを使いこなさないとだめなんだ。道具と気持ちを合わせることができたら一歩前進だな』  玲紗は明るい顔になって、また父親のもとへ戻り、先ほどよりも熱心に説明を聞いた。もっとも、あんな玩具は何の意味も持たない。高かったろうが、すぐに飽きてしまうだろう。  と、思っていたのに、玲紗はそこから一年以上、それら玩具で遊び続けた。どうやら本当に意思の疎通を図っているらしい。何だか可哀想になってきた。  見かねた俺は、魔法少女に必要なものを教えてやることにした。玲紗を居間に呼び、オレンジジュースを飲ませながら話して聞かせる。 『いいか、魔法少女に必要なものは五つだ。一つ、特別な能力。二つ、魔法のアイテム。三つ、変身すること。四つ、マスコットとなる動物。五つ、地球を守りたいという純粋な気持ち。今の玲紗には全部欠けている。努力するためには正しく努力しなければだめだ。結果の出ない努力をいくらしても、良い結果なんか得られないんだぞ』  言うと、玲紗は急に立ち上がってどこかへ消えた。そして画用紙とマジックペンを持って戻り、「もう一回おしえて」と言った。俺は同じ言葉を話して聞かせ、玲紗はそれを懸命に書き取った。
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