24人が本棚に入れています
本棚に追加
牢の中のつぶやき
私は、父王に幽閉されております。
もう、幾夜経ったのか。それすら気にならないほど、今の暮らしに慣れてしまいました。
城の片隅にそびえ立つ塔が、私の住みかであり、罪人が閉じ込められる場所。
お恥ずかしいことに、城で生れ育っておりながら、私は、この場所のことを知りませんでした。
城には、幾つもの塔があり、その各々の役割りなど、特に気に止めていなかったからなのです。
私が居る塔は、外から眺めれば、石を積み上げた細長い柱の様なものですが、中は以外と広く、私が閉じ込められられている部屋以外に、まだ、数部屋有るようです。
完全に遮断されている私には、憶測でしか判断できませんが、少なくとも、隣に、誰か囚われているのは確かです。
時折、冷たい石壁越しに聞こえる、鎖の音──。ずるずると、引きずる重い音──。
おそらく、足枷をかけられ、鎖で繋がれているのでしょう。
きっと、殿方。力任せに、守衛に襲いかかるかもしれないと、要心してのことでしょうか。
それとも、動きを制するほどの極悪人?
どの様な素性の方でも良いのです。
隣に、誰かが居るというだけで、私は安堵できるのですから。
最初のコメントを投稿しよう!