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隣の牢からのつぶやき
ああ、お嬢さん驚かせてしまったようだね。そう、私は、貴女の隣の牢に居る者だ。
こんな所から失礼するよ。窓と言えるかどうか、格子でしっかり囲われているこの窓から、貴女へ、話しかける事を許して欲しい。
私には、もう、時間がないのだよ。だから、お嬢さん、あなたが、どうして、毎夜、泣いているのか気かせて欲しいのだ。
毎晩、とても気になっていた。壁越しに聞こえる、貴女のかすれた声が。
隣に、人がいると知らせたかった。だから、あえて、部屋を動き回ったのだよ。賢い貴女なら、気がついていただろう?重く引きずる、鎖の音に──。
どうだろう。訳を話してもらえないだろうか。
大丈夫、私は、誰にも話さない。それは、貴女もわかっているはずだ。ここに居る限り、話す相手など現れない。一日一回、守衛が食事を運んで来るが、知っての通り、奴らは、こちらを見下している。当然、挨拶のひとつも交わさない。お互い、無言のままさ。
だから、貴女の話が漏れることはない。
私の押しつけがましい、お節介に、どうか、付き合ってもらえないだろうか。
私には、もう、時間がない。最後に、貴女の気持ちを聞かせて欲しいのだ。
毎晩、どうして、そして、どのような思いで泣いているのかを。
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