世話係の独白

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世話係の独白

今日から、世話係として参りました、マデリィーンです。 前任者ですか? さあ、良くわかりませんが、なにやら、王様の不況を買ったようで。勿論、小耳に挟んだ程度の事なので、余り、お気になさいますな。 王様?で、ございますか?いえ、そうではなく、今は、王太子様が後を継がれ、といいますか、実際は、前王様を追いやった、が、正しいのでしょう。表向きは、隠居された王の補佐という形を取られております。 ええ、ドゥワポルト様が後を。 どうされました? ああ、妃様は、まだ娶られておりませんが、正式に王位を継承されましたら、時間の問題かと。今は……あの方……、サンジェルマン伯爵夫人が、お側に……公娼としてお仕えしております。 離宮を与えられ、それは、優雅に暮らされておられるようで、お気に入りの者達を集めて、淫らな振る舞いにふけっておられるとか。勿論、ドゥワポルト様もご一緒に。 正直、前王様の時よりも、宮殿内は、乱れております。あの方も、かれこれ色好みでしたが、少なくとも、宮殿からは離れることはございませんでした。 さすがに聡明なドゥワポルト様も、色仕掛けには勝てなかったのでしょう。今では、離宮に籠りきりで、宮殿の事など、お忘れのようですわ。 何しろ、相手は、サンジェルマン夫人。手練手管で、ドゥワポルト様を操っているのでしょうか。それも仕方ない事なのでしょうか。 夫人に、ねだられるまま、夫人のお身内を高官につけたりしているようで、事実上、夫人の縁者が、国を動かして、いえ、やりたい放題、好き勝手に私腹を肥やしておりますわね。 ああ。もちろん。サンジェルマン夫人も同様です。恥ずかしげもなく、ドゥワポルト様のお名を出して、その威厳を利用しているのですから。 貴族の籍を手に入れたい豪商達は、こぞって、離宮へ出向き、夫人へ貢ぎ物を送っているようです 。 そうすれば、ドゥワポルト様に、進言差し上げましょう。私は、新王の公娼。願い事は、全て通る。 などど、恥ずかしげもなく、公言しているのです。 そもそも、夫人は、昔からそうでした。 欲に固執して。 人を足蹴にしても、なんとも思わない。まあ、貴族というのは、元々、その様な、きらいはあるのですけれど。 そうして、のしあがって行くのです。ですが、()められた方は、たまったものじゃありませんわ。 この私も、夫人に煮え湯を飲まされた一人で……。 あれは、新婚初夜。夫は、私の元へ現れませんでした。 そう、夫人と一晩中過ごしていたのです。ええ、私だけではありません。宮殿に詰める下級貴族の女達は、皆、夫人に夫を寝取られております。 そうすることで、あの方は、ご自身の力を誇示なさって来たのです。弱い者いじめというか。本当に、あさましいというか。 はい? まあ、恨んでいないと、言うのは嘘になりますけれど、もう、随分と、昔の話ですし。 もっとも、そうやって、皆が、諦めるのを、夫人は、狙っているのです。相当たちが悪いこと。 まあ!お喋りが過ぎましたわ。 はやく、朝の身支度をいたしましょう。 まずは、お(ぐし)を、とかしましょうか。
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