ep.1 奇人に遭遇。

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「ルールは?」 「12球勝負」 「あっそう。分かった」 これは、さっさとやって、昼休みの残りを回収した方がいい。 「先攻、後攻?」 「どっちでもいいよ」 じゃんけんするかと思ったら、ポケットから百円を出して、指先で投げて手のひらに隠すように置いた。 な、なにそれ。 かなり気障・・・。 それって、外国のコインがあってこそのhead or tailじゃないの? 日本の硬貨に人の顔ないよ。 つっこむのもめんどくさくて、「数字の方」と言うと、当たったらしく百円を見て「選んで」と言われた。 「じゃあ、後攻で」 「あっそう」 ボールを軽く手になじませるようにポンポンと軽く投げながら、加賀宮が指定の位置に立つ。 5番のパネルが光る。 すっと肩を下して、一瞬、フォームを整えて、思いっきり投げた。 4のパネルが当たる。 あー、まぁ、上手いじゃん。 結構な速度で、私、投げれるのかなと不安になった。 さすがに届かないとか、それはないと思うけど、久しぶりすぎて、あるかも。 負けるだろうけど、パネル、少しは当てたい。 スーツのわりにけっこう良いフォームで投げる。 5球投げて、3パネル当てた。 また5番のパネルが光って、パチンっと当てた。 こっちを振り返ると「びびったか?」と言った。 はぁ? びびったか? ば、馬鹿だ、この人。 私が「ぷっ」っと、思わず吹き出すと、むっとして投球に戻った。 結局、12球で、7パネル当てた。 まずまずなのか、機嫌よく振り返って「お前の番」と言う。 「あー、はいはい」
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