ep.1 奇人に遭遇。

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仕方なくジャケットを脱いで畳んで、脇のベンチに置いた。 履いている高めのヒールではバランスが悪いから、パンプスを脱いだ。 ブラウスの腕を捲ると、腕を組んで余裕をかまして見ている加賀宮を横目に、ボールを掴む。 投球なんて、何年ぶりだよ。 中学校までやっていたソフトの投げ方にするか、小学校の野球の勝負だというなら、上から投げようか。 軽く肩を動かしてから、試しに上から光っている6番を無視して真ん中を目指して1球投げた。 届くには届いて、9番の外側フレームに当たったけど当たりにはならなかった。 んー。 これ、行けるかな。 パネルにじっと集中していると、くすっと笑う低い声が後ろから耳に届いて、イラっとする。 何年ぶりかって、言ってるでしょ? 「久しぶりなのっ!!」 ムカついて、タイトなスカートを少し引き上げて、身振りかまわず思いっきり投げた。 今度は2番のあたりの上を通った。 あー。 ムカつく。 そのままとにかく真ん中の五番目指して、12球投げて、パネルに当たったように見えたのもフレーム部分だったのか、4パネルだけなんとか当たりになった。 「ははは。俺の勝ちだな」 満面の笑みで加賀宮が腕を組んで立っている。 その姿はなんとも図々しいというか、まるでどこかの王様のように態度がデカい。 「ですねっ!」
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