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仕方なくジャケットを脱いで畳んで、脇のベンチに置いた。
履いている高めのヒールではバランスが悪いから、パンプスを脱いだ。
ブラウスの腕を捲ると、腕を組んで余裕をかまして見ている加賀宮を横目に、ボールを掴む。
投球なんて、何年ぶりだよ。
中学校までやっていたソフトの投げ方にするか、小学校の野球の勝負だというなら、上から投げようか。
軽く肩を動かしてから、試しに上から光っている6番を無視して真ん中を目指して1球投げた。
届くには届いて、9番の外側フレームに当たったけど当たりにはならなかった。
んー。
これ、行けるかな。
パネルにじっと集中していると、くすっと笑う低い声が後ろから耳に届いて、イラっとする。
何年ぶりかって、言ってるでしょ?
「久しぶりなのっ!!」
ムカついて、タイトなスカートを少し引き上げて、身振りかまわず思いっきり投げた。
今度は2番のあたりの上を通った。
あー。
ムカつく。
そのままとにかく真ん中の五番目指して、12球投げて、パネルに当たったように見えたのもフレーム部分だったのか、4パネルだけなんとか当たりになった。
「ははは。俺の勝ちだな」
満面の笑みで加賀宮が腕を組んで立っている。
その姿はなんとも図々しいというか、まるでどこかの王様のように態度がデカい。
「ですねっ!」
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