ep.1 奇人に遭遇。

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「一緒に乗りますか?」 はぁ? なんで、シェアしないといけないわけ? それに、一緒にって、まるで、この人が先に停めたみたいに。 何、この人? 「いえ、乗りません。私が先に手を上げて……」「ひなこちゃんっ!」 声を荒らげそうになるのを抑えて、私のタクシーをシェアする気はないと文句を言っていたら、ロビーから芝田さんが小走りで大きな紙袋を抱えてきた。 「あ。」 「神田さん、来るならマーチャンダイズ、ついでに、サンプル持ってきてって」 あの野郎。 始めから自分で持っていけよ。 「了解です。すみません」 デザイナーの芝田さんに手間取らせた。 紙袋を受け取ると、眼の前のスーツの男に向き直る。 「とにかく、私のタクシーなんですけど?」 「あんた、ひなこっていうの?」 上質そうなスーツの割に、アンタ呼ばわり……。 歳だって、私と同じくらいに見えるし、髪型も整えられて、まともそう。 顔を見れば、キリッとした眉にくっきりした目鼻立ちで、意志の強そうなハンサム。 なのに、なんか、態度がすごく嫌な感じ……。 「え?そうですけど」 今、私の名前がひなこだろうが、花子だろうが、ピヨコだろうが、全然関係無いでしょう? 「小森ひなこ?」 「は?え。そうです、けど。あの、急ぎなんですけど、良いですか?」 「ああ、急いでるんだっけ。どうぞ」 なんだ、こいつ? ごちゃごちゃ言っている間に運転手まで、何事かと出てきて、ドアを開けて待っていた。 男が譲るように一歩下がったのを見て、さっと紙袋を抱えて、車に乗り込んだ。   ー 何なのよ、ホント。 が、乗り込んだ瞬間に、間違えに気がついた。 「あっ」 高級感のある、いい艶のレザーシート。 やばい。 タクシーじゃない。
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