ep.1 奇人に遭遇。

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「閉めますよ」 当たり前のように、男の隣に一緒に立っていたもうひとりの男性に言われて、足を引っ込めると、パタンとドアが閉まった。 ガチャっと車道側のドアが開いて、さっきの男が隣に乗り込んだ。 「すみません。間違え……」「俺の車だって、言っただろ?どこ行くの? まず送る」 有無を言わさぬ言い方。 ドアを閉めたもうひとりの男性が助手席に乗り込むと、席に戻った運転手が車を出した。 「え。あ、はい。ココです。栄枝産業」 手に持っていたメモを男に渡すと、「(ゆう)」と助手席の男性に呼びかけて住所のメモを渡した。 優と呼ばれた人は、少し若い人で、部下か助手とかだろうか。ツーブロックの髪をしっかりセットして、メガネの感じがかなり賢そうだ。 状況がつかめないけれども、とにかく送ってくれるらしい。 「さて。小森ひなこ?」 運転手が栄枝産業へ運転し始めるとみると、隣の男がこっちをまじまじとみて、私の名前を確認した。 「ですけど、どなたですか?」 「加賀宮流翠(かがみやりゅうすい)」 カガミヤ リュウスイ 聞いた事ない。 そんな変わった名前、知り合いではないと思う。 「はあ。あの、私、お会いしたこと、あります?」 「あるよ」 当たり前だと言わんばかりに短くそう言って、私を見た。 え? 会ったこと、ある?
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