ep.1 奇人に遭遇。

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客だろうか? 隣に悠然とすわっている男をもう一度しっかり観察すると、整った顔の隣の男は見るからに上質なスリーピーススーツに高級感のある腕時計。短めの髪を軽く流して、きっちりビジネス風にセットしてる。組んだ足元の革靴も磨かれて、艶がある。多分、高級。 この車の内装もすごい。 タクシーじゃなくて、自分の運転手っぽいし、助手席の若い男は御付きという感じ。部下か、秘書か。 こんな金ヅルっぽいクライアント、絶対、私の営業魂にかけて覚えていると思うけどなぁ。 「失念してます。すみません。どちらの加賀宮さんでしょうか?」 クライアントの可能性を残して、丁寧に聞いて見た。 助手席の男が前を向いたまま、ちょっと笑ったような気がした。 変な質問じゃないと思うけど? 「いくつ? 29? 28?」 加賀宮という男がぶっきらぼうにいきなり歳を聞く。 失礼な奴だと思ったけれど、減るもんでもないので、返事をする。 「……29ですけど」 「東第二小だろ?」 「へ?」 一瞬何を言われたのか分からなかった。 出身の小学校? 確かにそうだけど、何? 同級生? そんな名前の子、覚えてない。 けど、記憶力もそんなに良くないからわからない。 「そうですけど、なんですか? 同級生とかです?」 「なわけ無いだろう?」 鼻で笑った。 確かに、見れば、コイツ、私立のボンボンっぽいし。 でも、その言い方! ムカつく。 「じゃ、なんですか? ちょっと、いきなりなんか失礼だし、キモいんですけど」 加賀宮という男は眉を寄せて私を睨んだが、助手席の男と運転手は、ぷっと吹き出していた。 ムッとした彼が、何かボタンを触ると、パーテーションスクリーンが出て、後部座席は個室になった。 「え?ちょっと! こっわ。ちょっと、なに?」 何すんの? 怖いんですけど!!
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