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客だろうか?
隣に悠然とすわっている男をもう一度しっかり観察すると、整った顔の隣の男は見るからに上質なスリーピーススーツに高級感のある腕時計。短めの髪を軽く流して、きっちりビジネス風にセットしてる。組んだ足元の革靴も磨かれて、艶がある。多分、高級。
この車の内装もすごい。
タクシーじゃなくて、自分の運転手っぽいし、助手席の若い男は御付きという感じ。部下か、秘書か。
こんな金ヅルっぽいクライアント、絶対、私の営業魂にかけて覚えていると思うけどなぁ。
「失念してます。すみません。どちらの加賀宮さんでしょうか?」
クライアントの可能性を残して、丁寧に聞いて見た。
助手席の男が前を向いたまま、ちょっと笑ったような気がした。
変な質問じゃないと思うけど?
「いくつ? 29? 28?」
加賀宮という男がぶっきらぼうにいきなり歳を聞く。
失礼な奴だと思ったけれど、減るもんでもないので、返事をする。
「……29ですけど」
「東第二小だろ?」
「へ?」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
出身の小学校?
確かにそうだけど、何? 同級生?
そんな名前の子、覚えてない。
けど、記憶力もそんなに良くないからわからない。
「そうですけど、なんですか? 同級生とかです?」
「なわけ無いだろう?」
鼻で笑った。
確かに、見れば、コイツ、私立のボンボンっぽいし。
でも、その言い方!
ムカつく。
「じゃ、なんですか? ちょっと、いきなりなんか失礼だし、キモいんですけど」
加賀宮という男は眉を寄せて私を睨んだが、助手席の男と運転手は、ぷっと吹き出していた。
ムッとした彼が、何かボタンを触ると、パーテーションスクリーンが出て、後部座席は個室になった。
「え?ちょっと! こっわ。ちょっと、なに?」
何すんの? 怖いんですけど!!
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