ep.1 奇人に遭遇。

5/18
前へ
/481ページ
次へ
金のネックレスとかしてないし、イメージと違うけど、反社とかだったら、すごく怖い。 急に個室になった後部座席で「何ですか!?」と文句を言った。 「うるさい」 腕を組んでムッとしている。 「覚えて無いのか? お前、野球チームにいただろう?」 「あ?えー、……はい?」 小学校の頃、兄達の影響で野球チームにいた。 少年少女のチームで、数少ない女の子だったけど、私は運動神経がよく、兄と小さい頃から遊んでいたせいもあって、ピッチャーだった。 大昔の話。 それが、なに? 「そこまで言って、覚えてないのか?」 え? なにを? 訳がわかない。 変なことを言う人だと顔を伺っても、加賀宮は大真面目な顔で、私を見ていた。 じっとこちらを伺う男の顔は、きりっとした眉に、鼻筋が通って、真顔なのか怒ってるのか、やたらに威圧感がある。 そんな風に詰められても、小学校なんて、思い出そうにも大昔すぎる。 そう思っていたら、車が止まった。 見れば、取引先のビルについていた。 「ここに何の用事だ?」 「え。うちの者に、このファイルとこれ、渡すんです、けど」 「3分で戻れよ。話の続きがある」 「は?」 「2分58秒、57、56」 キッツ。 何、こいつ。 唖然としていると、運転手さんがさっとドアを開けてくれた。 自分のバックとファイルと紙袋を掴んで「ありがとうございました!」とお礼を言って自分でドアを閉めた。 顔はいい男だけど、きもい。 変態かストーカー系。 ばっくれよう。 足早に車から離れて、栄枝のオフィスへ向かった。
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7249人が本棚に入れています
本棚に追加