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ロビーで携帯片手に待っていた神田に、ファイルと紙袋を手渡す。
「しっかりしてよ、ほんとに」
「すんません。ひなこさん、神です!」
「ん、後でね。がんばって」
神、とか、口だけは上手い奴だ。
デザイナーさんが色やデザインを少し手直しした修正版のパンフ、これでオッケーが出ると良い。ついでにマーチャンダイズの作成もうちで、取ってこいよ。
神田の後ろ姿を見送って、さて、どうするか?と息を吐く。
このビル、裏口とかあるのか?とスパイみたいなことを考えて、そこまでする必要もないかと自分で自分に笑った。
ここら辺は、オフィス街だ。
沢山、スーツの人が歩いている。
そのままビルの前の通りを他の会社員に混じってこっそり歩いて離れたら、あの男も、しばらくしたら待ちきれなくなって帰るだろう。
運転手さんへのお礼は車を出るときに、もう言った。
逃げよう。
ロビーを出ながら、なるべく車の方を見ないように、地下鉄の駅のある方へさり気なく、あるき出す……
その瞬間、大きな手に腕を掴まれた。
「おい!」
怒った様子で、加賀宮がこっちを見ている。
「ひゃっ!」
「三分って言っただろう?どこヘ行く?」
じゃ、ジャイアン。
本気でヤクザとかじゃないよね?
「えええ?? もう急いでないんで、地下鉄で失礼します」
手を振り切って、逃げようか。
そう思って、男の顔を見たら、男はなにか思いついたように笑った。
「暇なのか?」
「え!? ひ、暇じゃないですっ。急いでない、だけで」
「暇なら、決着をつける。来いよ」
決着!?
なんの?
やっぱり、怖いんですけど、この人!!!
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