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画面にはプラモデルの箱の写真の傍に、赤字で
「アルティミットロボOnigoroshi 未使用未開封 12月13日発送 35000円」
と記されていた。
「……プラモデルとは、こんなに高いものだったかの?」
ハンスは首を横に振り、言った。
「これは恐らく、『転売ヤー』の仕業です」
ここ数十年の間でインターネットがインフラとして当たり前のものになった。それに伴ってフリーマーケット用サイトが少しずつ普及し始め、多くの人にとって物品の売買の敷居が下がった。今ではスマートフォンを通して一般人同士が物品の売買をするのも日常茶飯事。買いたい人と売りたい人がインターネット1本で繋がることができる便利な時代になった。しかしその一方で利益目的で人気商品を買い占め、高額で転売するという輩が出てきており、社会問題化している。勿論、転売で利益を得ようと目論む者が出ることは今に始まったことではない。人気アーティストが出演するコンサートのチケットなどが何万円、何十万円単位で取引されることは今までもあった。だが転売を行う人数も、転売が行われる件数もその頃に比べたら明らかに桁違いだ。3万円のゲーム機に10万円の値段がつき、2000円のプラモデルが4万円で売買され、しまいには元々二束三文のゲームのカードが5万円まで高騰する。このようなことが日々起こっており、転売を業とする者に対し「転売ヤー」という蔑称が生まれたくらいだ。
「支部長、申し訳ありません」
ハンスはそう言って深く頭を下げた。
「申し訳ないのはわしに対してではない。子どもたちに対してじゃ。それに、起こってしまったことは致し方あるまい」
「どうしましょう……」
「ううむ…………」
ニコラスの眉間には深い皺が寄った。
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