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これが成長すればするほど、私はないがしろにされる。私はパパの子じゃないし、ママから見たら、自分の子であり、自分を捨てた男の子供だ。
同じお腹を痛めて産んだ子でも、今愛し合ってる人との間に産まれた子供のほうが可愛いに決まってる。
最悪、虐待されかねない。
友達の小雪ちゃんも、新しいママが来たばかりの頃は喜んでたけど、新しいママとの子供ができると、パパにまでうざがられるようになったって言ってた。
そんなこと、させない。だから、私はそっとスカートのポケットの中に手を入れた。
ポケットの中には、ビスケットの代わりに小瓶がある。傾かないようにあらかじめ縫い付けた小瓶の中には、毒が入ってる。
子供の私が、どうやって毒を入手したかって?
大自然の中には、毒を持った植物がたくさんある。それは、遠い国のジャングルや、森の話じゃない。私達のすぐ近くにも、毒を持った植物はいくつもある。
それらの根っこや葉っぱから搾り取ったものを、水で薄めたものが、小瓶に入ってる。
私は人差し指を小瓶に突っ込んで湿らせると、忌々しい小猿の口元にやった。小猿はチュパチュパと音を立てながら、私の指をしゃぶった。
よだれまみれになって気持ち悪いけど、笑顔を作ってママを見る。
「見て見て、私の指しゃぶってる!」
「まぁ、本当ね」
「可愛いなぁ」
ふたりは微笑ましそうに私と赤ちゃんを見てる。きっと、ふたりにはいいお姉ちゃんに見えてる。それでいい。
私はいいお姉ちゃんを演じながら、ひとり娘の地位を確約する。
この毒がだめなら、また別の毒でやればいい。殺虫剤だってある。
私は赤ちゃんをあやすふりをしながら、パパに図書館に連れて行ってもらおうと考えた。もちろん、毒について調べるために。
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