優等生の妹

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 分娩室から、赤ちゃんの産声が聞こえた。これで今日から正式に、私はお姉ちゃんになった。 「元気な女の子が産まれましたよ!」  看護婦さんが……、今はこういう呼び方ダメなんだっけ? 看護師のお姉さんが、自分のことのように、嬉しそうに出てきた。 「本当ですか!? ありがとうございます!」  隣でずっと、立ったり座ったり、もぞもぞしながら待っていたパパは、勢いよく頭を下げる。顔を上げたパパの目には、涙が浮かんでる。 「妹が出来たの? はやく会いたい!」  私はまだ見ぬ妹に興奮しているフリをする。なかなか空気が読めるでしょ? 「会いに行ってあげてください」 「わぁい、妹! パパ、行こう!」  パパの手を引っ張って、分娩室に入る。すれ違いざま、看護師さんをチラリと見ると、微笑ましそうに私達を見てる。きっと、このお姉さんには、私とパパが本当の親子に見えてるんだろう。  そう思うと、少しホッとした。  パパが私のパパになったのは、3年くらい前のこと。  本当のパパは、ママと離婚しちゃった。ママは、「パパはお星様になったのよ」なんて言ってたけど、そんな子供騙しに引っかかるほど子供じゃないし、子供は大人が思っているより賢い。  本当のパパは、他の女の人と一緒にいたくて離婚したんだ。 「ママ!」  ママはベッドの上でぐったりと、けど、幸せそうな顔をしてる。ベッドの隣にはゆりかごがあって、そこから騒音が聞こえた。 「ママ、頑張ったね」 「あぁ、よくやったよ」  私がママにいたわりの言葉をかけると、ゆりかご直行しようとしたパパが、思い出したように言う。  これだから男の人は気がきかないって言われるんだと思う。  看護師さんにお礼を言って、1番頑張ったママに何も言わないなんて、おかしな話だ。 「わぁ、可愛い赤ちゃん! はじめまして、私はあなたのお姉ちゃんよ」  可愛い笑顔を作って、しわくちゃの猿みたいな生き物を撫でる。  これからこんな奴が私よりも可愛いと言われ、ちやほやされると思うとゾッとした。
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