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《序章》
「なんだ、今のは……」
私は痛む頭をさすりながら、水を吸って重くなった服を軽く絞った。災難である。川に落ちて流された上に何かで頭を殴られたらしい。居城が遠くにかすんで見える……。
「だいぶ流されたな」
私は気楽に散歩をしていただけなので、連絡手段を持ち合わせていない。自力で歩いて帰るより他無いだろう。私が渋々歩き出すと、大きな黒い影に飲み込まれた。
私は一度死に、生き返った。不思議なことでは無い。私は神であり、不死者。有事の際には神々の盾として命を投げ打つモノなのだから。
しかし、問題がある。死んでも生き返るとは言え、死ぬのはとても苦しく、恐ろしく、辛いものだ。できれば、死にたくは無い。故に、私は不死者と言えど慎重に生きている。無論、死にたくないからである。しかし、それでもなお私は死んだ。
より正確に言えば、私はおそらく殺されたのだ。私と共に暮らす数名の人間と一匹の使い魔の、いずれかの手(又は前足か後ろ足)によって。
このような事態を放っておく訳にはいかない。私は私を殺した者を探り当てることにした。死因と関係しているのか、ずぶ濡れであったため軽く髪を拭って着替えてから、容疑者に一人ずつ当たってみることにしよう。
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