京丹後の鬼伝説

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京丹後の鬼伝説

「大江山にゃ、数多(あまた)の鬼伝説が残っちょる」 婆様(ばさま)はボソリと語りだした。 「源頼光公が酒呑童子を退治した頃から遡ること400年。大江山には栄胡(えいこ)足軽(あしがる)土蜘蛛(つちぐも)と呼ばれた三鬼がおったのよ」 目の見えぬ齢五つの多々羅(たたら)が退屈せぬように、婆様(ばさま)はよくこうして昔語りを聞かせてくれた。 「三鬼を退治したのは、聖徳太子の異母弟の当麻皇子(とうまのおうじ)じゃった。 栄胡、足軽を大江山にて打ち倒した当麻皇子は、土蜘蛛に迫った。  野を越え山を越え谷を越えて逃げ延びた土蜘蛛は、とうとう海辺まで追い詰められた。 そして最後はここ『京丹後の立岩』に封じ込められたんじゃ。二度と再生できぬよう、全身をバラバラに切り裂かれてのぅ……」 凄惨な話の内容に、幼い多々羅(たたら)は息を呑む。 「今でも風の強い日の夜は、立岩から鬼がむせび泣く声が聞こえるのよ」                   
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