名付け

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名付け

言葉を獲得した鬼の子はやがて、多々羅を質問攻めにした。 「小屋の外には何がある?」 「外には村がある。山があり畑がある」 「村とは何じゃ?」 「人が集まり暮らす場所じゃ」 「人とは何じゃ?」 「人にも色々ある。わしも人じゃ」 「多々羅が人なら、われも人か?」 「うぬは……」 多々羅は言葉に窮した。 そして無理やり話題を変えた。 「話をするのに名を呼べぬとは不便じゃの。うぬにも名前が要るな」 そう言って多々羅はしばし考えた。 「多々羅とは『鉄を作ること』じゃと婆様(ばさま)が言うておった。ならば多々羅(わし)に育てられたうぬの名は『テツ』じゃ」
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