98人が本棚に入れています
本棚に追加
生殺し
産屋のそばでは村長が、苦虫を噛み潰したような顔をして立っておった。
「あまり近づくと穢れっど」
婆様は吐き捨てるようにそう言って、村長の横を足早に通り過ぎた。
多々羅は空気のように婆様のあとをついて進む。
不意に村長の太い腕が多々羅の細い肩をつかんだ。
「ええか? 生かさず殺さずじゃ! 塩梅ようやるんじゃぞ!」
多々羅は怯えたように顔を歪ませた。
ほとんど見えない多々羅の目に、人はぼんやりとした黒い塊として映る。
そして、失った視力の代わりに多々羅には特殊な能力があった。
最初のコメントを投稿しよう!