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鬼子生誕
「ギャアアアッ」
多江の口から出たとは思えぬような恐ろしい断末魔の叫び声と同時に、血生臭い匂いが多々羅の鼻腔から流れ込んできた。
「多江……多江よぅ――」
力なく垂れた白い手を握り泣き崩れるヨシ。
「フギャア!」
入れ替わるように、甲高い声が小屋の中に響いた。
「父無し子が産まれたぞ! 角もある! 鬼子じゃ、間違いなく鬼の男子じゃ!」
婆様は外にいる村長らに聞こえるよう、わざと大きな声を出した。
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