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どちらが鬼か
鬼の子はそのまま産屋で育てられた。
小屋に出入りを許されたのは婆様と多々羅の二人だけだった。
赤子は腹をすかしてよく泣いた。
決められた食事以外は小屋に持ち込めず、多々羅は鬼子が泣きつかれて眠るまで鬼子を抱いてあやした。
「生殺しだぞ、ええか? 余分なことはするなよ?」
村長はことあるごとに多々羅にそう耳打ちした。
「どちらが鬼だか分かったもんじゃねぇな」
多々羅はポツリと呟いた。
鬼子の頬に触れれば、多々羅の指は涙の跡でしっとりと濡れた。
その指を口もとに近づけると赤子は乳を吸うかの如く、懸命に多々羅の指に吸い付いた。
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