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「サーリーお嬢様」
ドアの外からマーリーの声が聞こえてきた。何だろうか? わたしをこの部屋から出してくれるのかなと一瞬、期待したけれど違うだろうなと思い直す。
「……何ですか?」
わたしは恐る恐る返事をした。
「ファンセーヌ家のルーベスタ様がお越しになりました」
「ルーベスタ様とはどなたですか?」
嫌な予感がして手にじわっと汗をかく。
「どなたってサーリーお嬢様の婚約者のルーベスタ様でございますよ」
「……」
「ルーベスタ様はご結婚の前にサーリーお嬢様にご挨拶をしたいとのことでございます」
「あ、挨拶なんていらないわよ」
ルーベスタかなんだか知らないけれど顔も見たくない。だけど、これがもし夢なのであれば少し興味はあるのだけど、でもこれが現実だとすると顔も見たくない。
「ですが、ルーベスタ様はお部屋の前にいらっしゃいます」
「えっ、部屋の前にいるの……」
「サーリーさん。お久しぶりでございます」
良く通る男性の声がドア越しに聞こえてきた。これがルーベスタの声なんだ。
「……」
「結婚式の前に少しお話をしたいなと思いまして参りました」
「わ、わたしは話したくないです」
「サーリーさんそうですか。分かりました。では後程……結婚式でお会いしましょう」
それからしばらくすると、カツンカツンカツン……カッンと部屋の前から立ち去る足音が聞こえてきた。
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