わたしは砂織そして……

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『砂織ちゃん』 この声は道也君の声だ。わたしの大好きな声だ。 「砂織、帰るんですね」 この声はマルコーリさんの優しくて包み込む声だ。 「はい、わたし帰れそうですよ」 「それは良かった。砂織がいなくなると寂しいけどね。帰っても僕のことを忘れないでくださいね」 マルコーリさんの澄んだ目がわたしを見た。 「はい、絶対に忘れないですよ」 「それは良かった。ありがとうございます」 「砂織ちゃん、わたしのことも忘れないでにゃん」 シロリンちゃんの肉球のあるもふもふで柔らかくて可愛らしい手がわたしに触れた。 「シロリンちゃん、ありがとう。絶対に忘れないからね」 「良かったにゃん! 砂織ちゃんと牛の乳搾りができて楽しかったにゃん」 そう言ったシロリンちゃんの海のような青色の目から涙がポロポロと零れた。プラス鼻水も。 「シロリンちゃん鳴かないでね」 「わたしのこともチラッと思い出してね」 ユーアーナがわたしの顔を見てにっこりと笑った。 「はい、ユーアーナのことも忘れませんよ」 わたしは二人と一匹の優しさに感謝した。ルーベスタさんのことは忘れるけど皆のことは忘れないよ。 ありがとう。ルーピー村の皆。 わたしは目を瞑りそして、優しい手を掴んだ。
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