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ただいま日本それから大好きな君
「さ、砂織ちゃんが目を覚ましたよ」
わたしは、そっと目を開けた。すると、道也君がわたしの顔を覗き込んでいた。
「……み、道也君。わたし」
「砂織ちゃん、僕は心配で心配でたまらなかったよ」
道也君はわたしの手をぎゅっと握り言った。
「わたしは、そうだった事故に遭って……」
「そうだよ。砂織ちゃんは事故に遭ってこの病院に運ばれて来てから意識がなかったんだよ」
そうなのだ。思い出した。わたしは、スーパーで艶のあるりんごを見つけたんだ。そのりんごを見て道也君にアップルパイを作ってあげようと思った。
そして、わたしはスーパーの袋に沢山のりんごを詰めてルンルンと歩いていた。
すると、その時。
「砂織ちゃん、見てくれよ。小説を書き終えたよ」
道也君が交差点の向こう側から手をぶんぶん振った。
「わっ、書き上げたんだね」
わたしは嬉しくてその小説が読みたくて急いで交差点を渡った。
車が来ていることに気づかずわたしは勢いよく飛び出した。
キキキーッという急ブレーキの音が鳴り「あっ!!」と思った時には既に遅くてわたしはドーンと車にはねられていた。そして、艶のあるりんごは交差点に散らばった。
「砂織ちゃん!!」
道也君の叫び声が聞こえたかと思うとわたしの意識は遠のいたのだった。
「道也君、心配かけてごめんね」
「何を言っているんだよ。砂織ちゃんが目を覚まして良かったよ」
道也君は柔らかい笑顔を浮かべた。その表情はマルコーリさんに似ていた。
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