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数日後。
「ねえ、道也君の小説を読みたいな。どんな小説?」
わたしは、病院のベッドに座りワクワクしながら聞いた。
「よし、砂織ちゃんに一番に読ませてあげるね。マルコーリさんとシロリンが活躍する中世ヨーロッパ風ファンタジーだよ」
道也君は自信ありげな表情を浮かべた。ってちょっと待ってよ。
「ねえ、今マルコーリさんって言った? それからシロリンって」
「うん、マルコーリさんとシロリンが活躍するんだけどどうかした?」
道也君は不思議そうに首を傾げた。
「わたし、マルコーリさんやシロリンが住んでいる異世界に行ってたんだよ」
異世界なのか夢の中の世界なのか分からなくなってきたけれど。
「えっ? 僕が書いた小説もマルコーリさんやシロリンが出てくるよ」
「……まさか、ユーアーナも出てくる?」
「えっ? どうしてそれを知っているんだよ」
道也君は目を見開き驚いている。
「ねえ、ルーベスタさんは出てこないよね?」
わたしは恐る恐る聞いた。
「……出てくるよ」
「……まさかと思うけどサーリーは出てこないよね?」
お願いだから出てこないよと言ってよとわたしは祈った。
けれど……。
「サーリーは主人公だよ。何故知っているんだよ」
「……どうして道也君の小説の登場人物とわたしのいた世界の人物が同じ名前なの?」
あの世界は確かにあったはずだ。夢でも道也君の小説の世界でもないはずだ。
「砂織ちゃんは意識不明だったから夢でも見ていたのでは?」
道也君は分厚い原稿用紙を握りしめていた。
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