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「そうだよ。サーリーお前がこの家からいなくなると寂しくなるな……」
そう言いながらハンカチーフで目頭を押さえるお父さん。
「サーリーわたしも寂しいですわ」
お母さんらしき人はパンを美味しそうにかじりながら言った。
「あの……わたし本当に結婚することになっているんですか?」
夢の中だったとしてもまだ結婚なんてしたくない。
「サーリーやはりお前は結婚したくなかったのかな? だがこれはお前が生まれた時からフラーンズ家とファンセーヌ家の約束になっているから仕方がない」
「……そんな」
「ごめんよ。サーリー」
お父さんはわたしの顔をじっと見た。この人は有無を言わせず従わせようとしているのだ。それってあんまりではないか。
「嫌ですと言ったらどうなるの?」
「……サーリー悪いがお前に選択肢はないのだ。許しておくれよ。可愛い娘サーリー」
「……そんな」
わたしは、お皿に盛られた白パンに目を落とし手に取りかじった。
あんまりだ! 勝手だよと怒りが込み上げてくるのに白パンはふわふわでもちもちしていて美味しかった。
「わたしは、サーリーじゃない! 春川砂織なんだからね」
わたしはテーブルをバンッと叩き立ち上がった。するとその衝動で白パンがポーンと飛び跳ねた。
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