気がつくとサーリーになっていました

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「そんな……」 夢なら早く覚めてほしい。日本のわたしの部屋でゆっくりと紅茶でも飲んで寛ぎたいよと思ったところでハッとした。 この夢の世界は外国ではあることは確かなんだけれど今の時代ではないよね。 部屋の中を見渡すと天蓋ベッドに天井から吊り下げられたゴージャスなシャンデリア、それに目の前に立っているマーリーの若草色のワンピースに真っ白なエプロン姿のメイド姿もいつの時代のヨーロッパなのだろうかと思えてくる。 なんて考えていると、 「サーリーお嬢様、ずっとお側でお仕えしてきたわたしも寂しいですがここは心を鬼にします」 マーリーは寂しそうに顔を歪めながらもその意思は変わらないようだ。 「マーリーさんと呼んでもですか?」 「……はい」 「マーリー様でもですか?」 「わっ! マーリー様だなんてとんでもございません。で、ですが、心を鬼にさせて頂きます」 マーリーはそう言って頭を深々と下げた。 「そ、そんな……」 「サーリーお嬢様のお気持ちもよく分かります。好きでもないお方とご結婚だなんて」 「だったらどうにかしてくれないかしら?」 「サーリーお嬢様がフラーンズ家にお生まれになられたことは宿命でございます。可哀想でございますが……」 マーリーは悲しげに微笑んだ。 そして、「では、わたしは扉の外で見張らせて頂きます」と言って部屋から出ていた。 わたしは、閉じられた高級感溢れる木製の扉をぼんやりと眺めた。
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