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「……マルコーリさんのお菓子や料理は美味しいですよね」
わたしは、顔に笑顔を貼り付けて笑って見せた。
「マルコーリさんってね子供頃から料理が得意だったんですよ」
「あ、そうなんですね」
「うふふ、わたしマルコーリさんに料理を教えてもらったんですよ。でも、わたし不器用だから大変だっただろうな」
ユーアーナはそう言って自慢げに笑った。
「マルコーリさんって優しいんですね」
「はい、もう本当に優しい人ですよ。サオリさんもカフェ店員として料理を教えてもらえるかもしれないですね」
ユーアーナはカフェ店員の部分を強調しているように感じるのだけど気のせいなのだろうか。
「あ、はい……」
「わたしも農家の娘なんてやめてカフェ店員になりたいな」
「おいおい、ユーアーナ何を言っているんだ」
マルコーリさんが大皿に盛り付けたクッキーを運んできた。
「だって、マルコーリさんの料理美味しいしそれに泥にまみれて畑仕事をするより紅茶やお菓子の香りに包まれたいもんね」
ユーアーナはぷくっと頬を膨らませた。その顔はとても可愛らしかった。
「あはは、料理を作るのも大変なんだぞ」
「そっか、だよね。何でも大変だよね」
「そうだよ。ユーアーナの家の果物美味しいんだから頑張るんだよ」
「ありがとう。まあしばらくは農家の娘を続けるね」
楽しそうに会話をする二人を見ているとなぜだか胸がチクリと痛んだ。
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