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「砂織、大丈夫ですか?」
マルコーリさんが心配そうにわたしの顔を見ている。そのマルコーリさんの優しい目を見ると、この世界にずっと居てもいいかなとも思ってしまう。
だけど、やっぱり元の世界に帰りたい。先程、わたしの頭の中にふわっと浮かんだ大切な君とは誰だったんだろうか?
思い出せなくて思いだそうとすると、何かが邪魔をする。
マルコーリさんにシロリンちゃんも心配そうにわたしの顔を見ている。それに、ユーアーナもじっとわたしの顔を見ているではないか。
わたしは、手の甲で流れていた涙をゴシゴシと拭い、「大丈夫です」と笑顔を作って見せた。
「……だったらいいんですが」
マルコーリさんは心配そうに眉間に皺を寄せている。
「大丈夫ですよ。あ、このクッキー美味しいですよ」
わたしは笑顔でクッキーを頬張った。やっぱりちょっとしょっぱいけれど優しい味がした。
「ねえ、サオリさん、そのクッキーあんまり美味しくないと思っていますよね?」
その声に視線を向けるとユーアーナが鋭い目でわたしを見ていた。
「そ、そんなことないですよ」
「わたしには分かりますよ。さっきからちっとも美味しそうな顔してなかったですもんね」
「そ、それは、そんなことないです。このクッキー美味しいですよ」
「無理しなくても良いのに」
ユーアーナはそう言って息をふっと吐いた。
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