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優しい穏やかな海のようなマルコーリさんのその瞳をわたしはじっと見つめた。ずっと、見ていたいと思ってしまった。
この気持ちは昔どこかで感じた、そんな気がする。わたしは、その場所に帰りたい。
誰かがわたしのことを呼んでいる。砂織ちゃんと誰かがわたしを呼んでいる。
わたしのことを呼んでいるあなたは誰なのかな? 帰りたいのに帰れなくて苦しくてどうしようもない。
「砂織、大丈夫ですか?」
穏やかな海のように優しいマルコーリさんの綺麗な瞳が揺れた。
「……大丈夫です。ちょっと、ぼんやりしていただけです」とわたしは、なんとか答えた。
「……それなら良いんだけどね」
「ご心配かけてすみません」
「マルコーリさん、わたし帰るよ。サオリさん疲れているみたいだもんね」
ユーアーナはそう言って椅子から立ち上がった。
「ユーアーナ、そうしてくれると有難いよ。りんごありがとう」
「どういたしまして、じゃあ、また来るね」
ユーアーナは胸の近くで小さく手を振りそして、わたしの顔をちらっと見て帰っていった。
ドアをバタンと閉める音が聞こえた。きっと、ユーアーナは機嫌が悪くなってしまったのかなと思う。
ユーアーナごめんねとわたしは心の中で謝った。
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