12.わたしの心を乱す男

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「片瀬」  ようやく真鍋課長の声が聞けた。 「なんでしょう?」 「俺もすぐ終わるから。家まで送る」 「いいえ、大丈夫です。まだこんなに早い時間ですし、電車で帰れますから」 「俺も帰るからついでだ。片瀬の家は通り道だから」  真鍋課長は残業も多く、早朝に現場に向かうことも少なくないので、車通勤が許可されている。 「よし、行くか」  帰る準備ができた真鍋課長が立ちあがった。  真鍋課長の車に乗るのはこれで二回目。車体が高くて前はうまく乗れなかったけれど、今回はなんとかうまく乗ることができた。 「学習したな」 「顔が笑ってますよ」 「ははっ、悪い。つい」  打ち合わせの帰りとは打って変わり、和やかな雰囲気だった。
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